保育園の食育を見直すことにしました。
保育園でも学童でも「栽培」「収穫」「クッキング」など取り組みには力を入れていたつもりでしたが、それだけでは不十分だと気づいたからです。
令和8年3月に長崎県の保育所・認定こども園における「食事の提供に係る業務」実施要領が改訂されています。保育所保育指針や各種ガイドライン・要領は、言葉が難しくボリュームもあるため、なかなか読む気になれません。
そこで今回、実施要領を実際に読み込みながら、「保育士に関係することは何か」「普段の保育にどう生かせるのか」という視点で整理してみることにしました。
また、保育園の食育に関係するクイズを作成しています。保育士向け、調理職員向けありますので、良かったら挑戦してみてください。
保育園の食育を見直したキッカケ
保育園の食育を見直すことになったキッカケは、監査です。保育園の監査は年に1回あり、市役所の方が数名来園し、保育の内容や会計、書類や記録などを細かくチェックします。その中で、給食の記録や献立表作成の効率化などについてアドバイスをいただき、この機会に給食全体の流れを見直すことにしました。そして、見直しの参考として勧められたのが、長崎県の「食事の提供に係る業務」実施要領です。
私自身、この実施要領については勉強不足で、細かい内容までは把握できていませんでした。
最初は「給食や調理についての要領」というイメージでしたが、読んでみると、普段の保育や食育、調理職員と保育士の連携など、保育士にも関係する内容が多く書かれています。これまで「食育」について本を読むことはしていましたが、この実施要領を読んで、栄養管理や衛生管理、調理の手順など、保育士も知っておいた方が良いと感じることが多かったです。
実施要領は全部で9章あり、運営管理、栄養管理、食育、衛生管理、事務管理など、保育園の食事提供についてまとめられています。
今回はそのすべてを紹介するのではなく、特に保育士にも関係が深い「運営管理」「栄養管理」「食育」「衛生管理」を中心にまとめました。
「食事の提供に係る業務」実施要領のポイント
実施要領は全部で9章ありますが、保育士がすべての内容を細かく覚える必要はないと思います。
保育士が把握しておいた方が良い部分は、第2章~第5章の4つ。
運営管理
給食をどのような体制で運営するのか、保育士と調理職員がどのように連携するのかが示されています。保育士には、子どもの健康状態や食べている様子、残食などを把握し、食事提供部門と情報共有する役割もあります。
栄養管理
子どもの発育・発達、健康状態、栄養状態などを把握しながら、必要な栄養量や献立を考え、食事を提供していきます。単に献立を作って調理するだけではなく、子どもの食べる様子や摂取状況なども確認しながら、食事の内容を評価・改善していきます。
食育
食育は、クッキングや栽培などの特別な活動だけを指すものではありません。「食を営む力」の基礎を培うことを目標に、毎日の食事を中心として、生活や遊びの中で食に関わる経験を積み重ねていきます。
衛生管理
安全な給食を提供するための調理室内の衛生管理だけでなく、食事前の手洗いや子ども・職員の健康状態、食育やクッキングを行う際の衛生管理など、保育士にも関係する内容があります。
これから、この4つの内容について、保育士が知っておきたいポイントと、普段の保育にどう生かせるのかをもう少し詳しく見ていきます。
保育園の給食は「調理室だけの仕事」ではない
実施要領を読んでまず感じたのが、保育園の給食は調理室だけで完結する仕事ではないということです。
実施要領では、保育士と調理職員の役割を明確にし、全職員が協力できる体制を整えることが示されており、保育士にも、配膳や食事の介助だけでなく、子どもの健康状態や食べている様子、残食などを把握し、調理職員と情報共有する役割があります。また、食育についても連携して取り組むことが示されています。
「今日はよく食べていた」
「最近、この食材をよく残している」
「給食に出てきた野菜に興味を持っていた」など
保育士が知っている「子どもの姿」と、調理職員が持っている「食の知識」を共有し、保育室と調理室が一緒に考えていくことが大切なのだと感じました。まずは、給食中に気づいた子どもの姿を調理職員に伝えることからでも、連携は始められると思います。
保育士にも知ってほしい「給食」と「食育」のつながり
「栄養管理」と聞くと、調理職員や栄養士の専門分野というイメージがないでしょうか。
実施要領では、子どもの発育・発達、健康状態、栄養状態、生活状況などを把握し、一人ひとりに応じた食事を考えていくことが大切だとされています。また、1回の食事だけではなく、1日、1週間、1か月という期間で摂取量を考えることもポイントとして挙げられています。
実施要領に給食ができるまでの流れとして、
子どもの状態を把握する → 食事計画を立てる → 献立を作る → 調理・提供する → 食べている様子を確認する → 評価して改善する
とありますが、実際に子どもが食べている様子を見て、「固そうだった」「量が多そうだった」「よくおかわりしていた」「いつも同じものを残している」といった情報を持っているのは保育士です。
おかわりや食べ残しの量、食べ方などを継続的に観察し、必要に応じて食事の形態や献立、盛り付け量などの改善につなげることなど、保育士が子どもの食べる姿を観察して伝えることも、より良い食事提供につながる大切な役割なのです。
そのため、調理職員が作ってくれた給食を「出されたものを食べてもらう」と考えるのではなく、子どもの姿を見ながら、よりその子に合った食事の提供方法は?と考えながら提供する視点や改善しようとする姿勢は保育士も持っておくべきポイントだと思います。
保育園の「食育」とは?5つの子ども像
次に、保育園の食育は何を目指して行うのでしょうか。
実施要領では、食育の目標を、生涯にわたって健康でいきいきと生活するための「食を営む力の基礎を培うこと」としています。そして、目指すべき「5つの子ども像」が記されています。
・お腹がすくリズムのもてる子ども
・食べたいもの、好きなものが増える子ども
・一緒に食べたい人がいる子ども
・食事づくり、準備にかかわる子ども
・食べものを話題にする子ども
こうして見てみると、「野菜を育てる」「クッキングをする」といった活動だけが食育ではないことが分かります。
友達と一緒に給食を楽しむこと、食べたいものが増えること、食べ物について話すこと、食事の準備に関わることなど、毎日の生活の中にも食育はたくさんあり、何か特別なことをしなければいけないという訳ではないのです。
私は、食育とは栽培やクッキングというイメージを強く持っていました。しかし、よくよく考えると、保育所保育指針の5領域や10の姿も特別な活動をすることよりも、普段の生活の中で身についていくことや体験することなどを大切にしています。食育も同じように、何かをさせるという発想ではなく、引き出すための環境を用意するという考えを持つことが大事なのだと考えることで、保育園の食育活動も充実していきそうです。
実施要領でも、食育は保育の内容の一環として位置づけられ、子どもが日々の主体的な生活や遊びの中で食に関わる経験を積み重ねていくことが大切にされています。
では、普段の保育の中でどのように食育を広げていけばよいのでしょうか。
保育園の食育は「栽培・収穫・クッキング」だけではない

私の勤める園では、野菜の栽培や収穫、クッキングなど、さまざまな食育に取り組んできました。
しかし、今回実施要領を読み直して、「食育活動をすること」自体が目的になってしまっていたと思いました。
例えば、給食を食べているときに子どもが、「この野菜は何?」「どうやって作ったの?」「この種を植えたらどうなる?」と興味を示すことがありますが、こうした子どもの疑問も、食育を始めるキッカケになります。
実施要領にも、食育計画は子どもの実態を踏まえて作成し、年齢やクラスの実態に合わせて柔軟に修正していくことが望ましいとされています。
そのため、最初から決められた活動だけを行うのではなく、普段の生活や遊びの中にある子どもの興味を拾い、そこから食に関わる経験を広げていくことも大切です。普段、保育の中で子どもたちの興味関心を広げるためにやっているように、「見る」「触る」「匂う」「調べる」「育てる」「作る」「食べる」「人と話す」など、さまざまな方向へ広げることで保育園の食育活動が充実していきます。
保育園でできる食育の実践例
実施要領には、食育の方法として、給食を通して行うもの、絵本や紙芝居などの視聴覚教材を使うもの、クッキングや栽培など実際に体験・参加するものなど、さまざまな方法が紹介されています。
内容についても、栄養や食習慣だけではありません。手洗いなどの衛生、食事のマナー、友達との共食、買い物、調理、配膳、季節感、菜園活動、食文化など、幅広い内容が保育園の食育として挙げられています。
こうして見ると、普段の保育の中にも食育につながる場面はたくさんあります。
例えば、給食に出てきた野菜に興味を持った子がいれば、実際の野菜を触ったり、匂いを嗅いだり、絵本や図鑑で調べたりする。さらに興味が続けば、栽培や収穫、クッキングへと広げることもできます。
大切なのは、最初から「今日は食育をする」と活動を決めることだけではなく、子どもの「これ何?」「やってみたい」「どうなるんだろう?」を食育につなげていくことです。
私の勤める園では、毎日の給食を掲示してくれています。調理する前の野菜を置いてくれていたり、米の脱穀前と玄米、白米を並べて置いてくれたりしていますが、「この野菜なに?」「なんでお米茶色いの?」などの疑問が生まれる取り組みになっているのかもしれません。

また、食事が終わった子どもたちは、自分で調理室前に食器を下げるようにしていますが、実施要領の中に、食事をつくる場と食べる場をつなぎ、子どもが食事をつくる人を身近に感じられる環境をつくることが大切だと記されていました。
保育士は子どもの興味や姿を知っている。調理職員は食材や調理についての知識を持っている。
というお互いの強みを生かすために、保育士と調理職員の連携を深めていくことで保育園の食育活動に幅が生まれていいくのだと感じました。
保育園の食育年間計画を見直し
実施要領を読んで、私が実際に見直したものの1つが「食育年間計画」です。
これまでの年間計画では、「○月はクッキング」「○月は箸の使い方」「○月は魚の解体」といったように、年間を通して行う活動を決めていました。しかし、実施要領には、年間指導計画について、保育士と栄養士や調理職員が連携しながら子どもの実態を踏まえて作成し、年齢やクラスの実態に合わせて柔軟に修正していくことが望ましいとされています。
そこで、その年の子どもの姿を見ながら食育を選び、広げられる計画にしていくことにしました。
具体的には、食育の目標となる「5つの子ども像」を軸にしながら、これまでの保育園の食育活動や、まだ取り組んでいない食育アイデアを一覧表にし、その年の子どもの興味や発達に合わせて選べるようにしました。
例えば、食材への興味が出てきたクラスなら、食材に触れる、匂いを嗅ぐ、図鑑で調べる、栽培してみる。食事を作ることに興味が出てきたら、調理職員に話を聞いたり、実際の調理を見る機会を作ったり、クッキングにつなげたりすることもできます。
そして、実施要領の中に「食育は計画して実施するだけではなく、評価し、再び計画するPDCAサイクルで進める」と示されているように、取り組んだ内容や反省が次年度の選択肢へと蓄積していくような形にしました。
保育士も知っておきたい給食の衛生管理
次に、衛生管理です。調理室の清掃や食材の温度管理など、調理士が行うものというイメージがあるかもしれませんが、実施要領には、「保育と食事提供が連携した衛生管理」という項目があり、保育士にも関係する内容が示されています。
例えば、配膳に関わる職員や子どもの手洗い、食事前のテーブルの清掃・消毒、清潔な器具の使用などです。
普段何気なく行っている「給食前に手を洗う」「テーブルをきれいにする」といったことも、安全な給食を提供するための衛生管理の1つです。また、給食は作った後の管理も大切で、実施要領では、調理後の食品は調理終了後から2時間以内に食べることが望ましいとされ、提供まで時間がかかる場合の温度管理についても細かく定められています。
保育士側も、衛生管理を担っているということを自覚し、給食時間が大幅に遅れる場合などには、「調理室で管理しているから大丈夫」と考えるのではなく、調理職員と情報を共有することが必要です。そのためにも、調理士がどのような衛生管理をやっているのか、どのような基準があるのかを一緒に把握できる機会を作ることは大切だと思います。
クッキングや食育活動にも衛生管理が必要
特に保育士が知っておきたいと思ったのが、クッキングなどの食育活動です。
実施要領では、保育園で食育活動をする時の衛生管理について、具体的に書かれています。
クッキングで使用する野菜は加熱し、生で食べる献立にはしないこと、食材は当日に購入して鮮度や保管に注意すること、手洗いや食品の洗浄、十分な加熱、調理器具の洗浄・消毒などが示されています。
さらに、調理室では食育活動として園児の調理実習を行わないことや、クッキングで使用した食材と調理済み食品についても保存食を採取し、原則として-20℃以下で14日間保存することが示されています。
私自身、食育について考えるときは「子どもにどんな経験をしてもらうか」に目が向きがちですが、クッキングや収穫した食材を使う活動では、「どんな食育をするか」と同時に「安全に実施できるか」を考えることも重要です。
子どもの興味を大切にしながら、安全に食の経験を広げていく。そのためにも、食育を計画する段階から調理職員と相談しておくことが大切だと思います。
給食の「検食」にはどんな意味がある?
もう1つ、保育士も知っておきたいのが「検食」です。
実施要領では、給食を提供する前に調理従事者以外の検食者が食べ、乳幼児の食事として量や質が適切か、衛生的な取り扱いがされているか、盛り付けなどが子どもの立場に配慮されているかなどを確認することが示されています。また、異味や異臭などの異常があれば、食事の提供を中止するなどの対応が必要です。
つまり検食も、安全面だけではなく「この給食は子どもにとってどうか」を確認する機会になっています。
実施要領を読んでみると、衛生管理は調理室だけで完結するものではなく、配膳、食事をする環境、食育活動など、普段の保育とつながっていることが分かりました。
保育園の食育 実施要領を読んで
今回、実施要領を読んで「保育士に関係することは何か」「普段の保育にどう生かせるのか」という視点で整理してみました。
重要な点を挙げていきましたが、私の中で1番大切だと思ったことは、保育士と調理士の連携を取れる体制を整えることです。保育士は普段の保育の中で、子どもたちの発達に合わせて環境作りを工夫したり、関わり方を工夫したりしています。しかし、食事関係のことになると、調理職員に任せきりになってしまう部分もありました。その理由の一つは、私自身が調理職員の業務内容や実施要領について十分に知らなかったことだと思います。
今回、実施要領を読んでまとめましたが、これからすべきことは保育士と調理職員とで共通理解を図っていくことだと思っています。そして、共通理解のもと、朝おやつや給食、離乳食、調乳、食育など場面ごとの連携の仕方を擦り合わせていかなくてはいけないと思いました。
冒頭でも書いたように、保育所保育指針や各種ガイドライン・要領は、言葉が難しくボリュームもあるため、なかなか読む気になれませんし、読んだとしても実践に活用するのは更に難しいです。私なりに、できるだけ分かりやすく要点をまとめてみましたが、誰かのお役に立てる記事になっていれば幸いです。また、今回読んだ、「食事の提供に係る業務」実施要領の内容をもとに保育士向け・調理職員向けのクイズも作りました。活用していただけると嬉しいです。
保育士向け 衛生管理クイズ 作成中
調理職員向け 衛生管理クイズ 作成中
終わり