【学童保育】変化の記録(令和1~8年)

最近、見学に来てくれる人や、YouTubeやブログなどを読んでくれる人が増えてきており嬉しく感じています。
先日、同業者の方に、「学童がこれまで取り組んできた内容をブログにまとめています」と話しましたが、これまでの取り組み内容をまとめたものはありませんでした。以前のサイトに書いてましたが消しました‥‥。

そのため、これまでの学童保育の変化の記録を残してみたいと思います。

学童支援員の方や保育園で、子ども主体の保育方法へと変えていきたいな思っている方には参考になるかもしれません。
失敗例も含めて紹介しますので、よかったら読んでいただけると嬉しいです。

一斉から子ども主体の学童へ

もともと、東京の新宿せいが子ども園に保育士として修業にいっていました。
新宿せいが子ども園は、子ども主体の保育を重んじ、子ども同士の関わりも大事にしている園です。日本だけでなく、海外からも保育を導入したいと言われるほど注目されており、当時園長をされていた藤森先生から学ばせていただきました。

東京生活4年を経験し、地元に戻り保育園に勤務します。東京での学びを生かして保育を見直すことが私の役割でしたが、最初に取り掛かったのは学童保育です。当時の学童保育は、30名ほどが在籍しており、みんなでグランドに出てサッカーをしたり、○○会をしたりと簡単に言うと一斉型の保育方法で運営していました。ここから、一斉保育から子ども主体の学童へと改革が始めります。

保育方法を説明して失敗

初めに、子ども主体とは何か?なぜ子どもの主体性が大事なのか?などを職員さんたちに説明しました。私なりに東京で学んできたことを伝えようとしましたが、上手く伝わりません。私の説明が下手なことに加えて、一斉保育と子ども主体の保育は変化のギャップが大き過ぎたからです。今振り返ると、子ども主体というゴール(理想)を言われても、そこまでのプロセス(過程)がイメージできないのは当たり前だと思います。

失敗を経て、どうしようか悩みました…。そして、車の運転中に閃きました。

壁に貼り出して選ばせる

東京で、モンスターハンターというゲームをしていました。モンスターを狩り、ステータスを上げて、より強いモンスターを狩るゲームです。ゲーム内にはクエストボードがあり、どのモンスターを狩りに行くのかを選択できるようになっています。強いモンスターを倒すために、何度も弱いモンスターを狩ってレベルを上げなくてはいけません。

「このシステム…子ども主体に繋がるんじゃないか⁉」これが閃いた内容です。

さっそく、職員さんに説明しました。子ども主体とか難しい言葉は無しでゲームの説明です。
「このクエストボードを学童でやりたいです」
「大人がやらせてみたいことは貼り出せばいい」
「子どもが選んで自らやれば子ども主体になる」

簡単に言うとこんな感じで紐付けて説明しました。そこから、職員みんなで協力してクエストボードを作り、これまで大人から呼びかけていたことをできる限り、掲示で呼びかける形に変えていきます。初めはポスターみたいなものを作ったり、難易度を付けてみたりと試行錯誤しました。わざわざ掲示するのが面倒だと言い合いになったこともあります。しかし、徐々に子どもたちに浸透するようになりクエストボードが機能するようになっていきました。

環境構成を考える

クエストボードが始まったとは言っても、これまで大人が指示を出して活動していたため自発的に遊んだり活動したりする子は少なかったです。大半の子は毎日毎日、3歩当てかドッジボールをし、それ以外は「面白くない」「することない」「ひまい」という状況でした。この時に気づいたのは、子どもたちの遊びの選択肢が少ないということです。

そのため、当面の課題は、遊びの選択肢を増やす作業に集中しました。しかし、金銭面でも余裕がなかったので玩具の購入は最小限に抑えなくてはいけません。そのため、トランプの遊び方を伝える作業から始まりました。トランプ1つでも、遊び方はかなりあります。ババ抜き、ジジ抜き、神経衰弱、ダウト、ポーカー、魚釣り、豚の尻尾など。また他にも、けん玉の大皿、小皿、中皿、けん、飛行機、ふりけん、日本一周など。これらをクエストボードに貼りだしてできる子を増やしていきました。

学童の環境構成の面では、1日の流れの動線や宿題スペースと遊びのスペースなど家具で仕切りを作りながら、大まかなスペースだけ作りました。家具や玩具を購入できれば、もっと簡単だったかもしれません。大変でしたが、職員みんなで工夫しながらなんとか地道に遊びの選択肢を増やしていきました。すると、少しずつ座って遊ぶ子、自発的に「○○する」と遊び始める子が増えていったのです。

意見箱の設置

自発的に遊ぶ子が増えましたが、まだ大人に用意された物から選んで遊んでいるだけです。「○○をしてみたい」と子どもの発想で子どもが発案したもので遊ぼうとする姿はありません。そこで、次に取り掛かったのは意見箱の設置です。子どものやってみたいことや要望を募集するボックスです。当時、子どもたちの口癖で「どうせ○○できんもん」「どうせ言っても意味ない」などが非常に多く、大人に意見する前に諦めていました。小学校での出来事を聞くと、理不尽に怒られているため「先生にちゃんと説明しておいで」と言っても「どうせ怒られるだけやもん」と言うような状況です。

意見箱を設置することで、自分の意見が形になったという成功体験を積み重ねて欲しいと思いました。

しかし、意見箱を設置しても意見は出ません。子どもと一緒に「○○できたら面白そうね!」「意見箱に書いてみようか!」と一緒に考えるところから地道に取り組みました。印象的だったのは、やきいも企画です。さつまいもを大量に頂いたので、私から高学年に挑戦状を出しました。先生vs高学年でおいしい焼き芋を作れた方が勝ちという内容です。「作り方も何も教えないので、自分たちで調べて、必要な物があれば意見箱に書いてください。」としました。ライターや桶、ドラム缶などが意見箱に入っており、活用してくれたのを覚えています。そうやって、少しずつ子どもたちに意見箱が浸透していきました。今では、子どもたちが企画したもので溢れており保育が潤っています。

行事を子ども主体へ

クエストボードの活用と、子どもから意見が出るようになったことで行事も変化していきました。例えば大人が企画・準備していたクリスマス会を、クエストボードにクリスマス会の出し物募集を貼り出します。ついでに司会者も募集します。そうして集まった子たちが中心になって行事を形作ってくれるようになりました。今では、どの行事も参加する子どもが増えボリュームがすごいことになっていますが、その中でも夏祭りがすごい賑わいです。出店を募集すると沢山の出店がオープンし、クオリティーもすごいです。

本番当日に向けて、2カ月前くらいから商品作りやポスター書きをして取り組んでいますが、大人がやらせる訳ではありません。子どもたちが遊びと行事準備を天秤にかけて取り組んでいます。

保育方法を進化・更新する

学童保育の変化の記録というタイトルですが、おおまかな内容はこんな感じです。クエストボードが始まり、遊びの選択肢を増やし、意見箱を設置し、行事にも落とし込みというのが一連の流れですが、一番大事なのは更新していくことだと思います。

クエストボードは最初、模造紙にセロハンテープで張り出していましたが、今では個人の冊子にこれまでのクエストが一覧になって挟まっています。また、個人のステータスも上がっていく仕組みにし、学童内の通貨で欲しいものを購入できるようになりました。年を重ねるごとに遊びの種類も増え、よりゲームに近づいています。

意見箱は、意見の量が多いため毎週木曜日に大人たちが協議した内容を返答しています。意見箱専用のボードもあり、子どもから出た意見→大人からの返答→決定の段階別に貼り出され進行状況が可視化され分かりやすくなりました。

行事は、恒例行事やバス遠足などの小行事まで沢山ありましたが、年々減らしていってます。その理由は、子どもたちが発案して取り組む活動が増えたため行事を設定する必要性が無くなったからです。

環境構成は、子どもたちから出た意見を基に必要なスペースを作り、配置を変えを繰り返している内に随分と変わりました。大きく変わったのは、園庭でドッジボールや3歩当てをしていましたが、ほとんど畑と焚火場になったことです。園庭では走り回らずに、虫探しや栽培、焚火、泥遊びなどをして遊び、小学校のグランドで思い切り走り回って遊んでいます。

保育方法を一斉保育から子ども主体へ変えた経緯で、クエストボードなどを発案したのは私ですが、今の現状を作り上げたのは学童の先生たちです。1つ1つが仕組みとなって機能するまでに、試行錯誤が絶えずあったと思います。8年前にこういう保育にしたいと漠然と思い描いていましたが、思っていた以上になりました。これからも進化して面白い取り組みが生まれていくことが楽しみです。

ここまでは、保育方法に焦点を当てて紹介してきましたが、保育を作り上げるために必要なことは、保育とは別の部分にあります。

保育を作り上げるために必要なこと

ここからが、学童保育の変化の記録として最重要な部分だと私は思っています。

クエストボードの設置など取り掛かりの始まりを紹介しましたが、同時に職員間の連携にも着目し改革しました。
当時、「子どもが自ら遊べない」という問題点の他に、「ケガの多発」「保護者への伝達ミス」「職員の感覚のすれ違い」など職員間の連携や組織体勢の問題点が多かったです。

いくら子ども主体が大事だと言っても、子どもの安全を確保できていない限りいい保育とは言えません。

子どもから意見が出るようになるにつれ、活動範囲が広がり危険性が高い活動も多くなりました。

組織内共有の徹底

組織体制の課題に対して、1番最初に取り組んだのが「共有の徹底」です。
職員間で、「○○先生しか把握していない」という属人化した状況を無くすことや、保護者への伝達漏れを無くすこと、園外活動に出る時の人数確認や行先など細かいところまで話し合いを重ねてルールを作っていきました。時には、意見が衝突することもありましたが、ルールが曖昧で職員間も察し合いながら動くのは居心地が非常に悪いです。また、ケガに対しての責任の所在も曖昧で、他の人のせいにするのが目立っていました。

具体的には、子どもの伝達や連絡などを記入するホワイトボードの設置。出欠管理の様式作りや担当決め。保育中の職員の立ち位置や役割決め。職員間の連絡方法の確立。熱中症の対応基準作成。感染症の対応基準の作成。など問題が発生する度に、どうすれば同じ問題が発生しないかを考えて職員間で決まり事を作っていきました。はっきり言って、非常に面倒で大変です。

そして、職員間で決まりを作ったり問題点を浮き彫りにしたりするためには、「話し合い」の時間が必要でした。
月1回の職員会議に加えて、職員だけで話し合う日を週に1回設けました。また、話し合いの方法にも決まりを作り、話し合いの質を高めていくことにも力を入れました。具体的には、「今日話し合う内容は○○です」と議題を周知することで、時間を意識して話し合い脱線するのを防ぎます。また、「何話す?」と話し合うことを決める時間も無駄なので、日々の業務中に発生した課題や疑問点は付箋に貼り出しておくようにしました。

熱中症や感染症、嘔吐処理、ケガなどへの対処についてはマニュアルを作り、模擬練習を定期的に行います。
改革を始めて1~2年間は、保育方法を話す暇がないくらい、職員間のルールや連携、業務中の課題などを解決することでいっぱいいっぱいでした。話し合いの空気も重かったです…。しかし、「職員間共有」「会議の見直し」「課題の吸い上げ」などを行っていくことで、学童全体の最低基準が底上げされて、課題を解決するスピードも上がっていきました。

そして組織体勢が整っていくことで、保育方法や子どもの姿について話し合う時間が増え、保育が充実していきました。

リーダー設置

現在進行形で取り組んでいる最中ですが、現場リーダーは必須です。これまで、保育方法を変える時も組織体勢を見直す時にも、中心になっていたのは私だったと思っています。私がやっていたことは、発案するだけでなく、どこで躓くかを予測し、どんなアドバイスをすべきか考えたり、業務中の課題をどうすれば改善できるか考えたり、自ら提案すべきなのか、議題に挙げるだけで解決策は考えてもらうべきなのか考えたりしていました。また、熱中症や感染症、嘔吐処理、ケガなどのマニュアル作成しレクチャーするための事前準備など、学童がよりレベルアップしていくために必要なことを用意しておいて、タイミングを見計らって議題に挙げるなども行っていました。リーダーという位置づけではありませんでしたが、学童全体と職員1人1人の特徴を見て取り組んできたつもりです。

私の考えでは、現場のリーダーの役割は全体を見て職員が各々考えて行動できる環境を作っていくことだと思っています。

そのため、リーダーの役割を担う存在を育てなくてはいけません。ここ1~2年はリーダー育成を目標に取り組んできました。
今年は現場を離れ、学童は完全に任せており口出しもしていませんが、私が現場に入っていた頃以上に保育が更新され進んでいってる気がします。

ここまでが、学童保育の変化の記録です。
この記事の内容は、私個人の偏った視点になってしまいました。もしかしたら、他の職員目線では、違った道のりに見えていたかもしれません。もし、同じように一斉保育から子ども主体へと改革をされている方や、保育に躓いている方がいらっしゃったら、参考になる部分はあると思います。実際に現場を見てもらい、意見交換したほうがより伝わりやすいと思いますので、遊びに来てください。

おわり