子ども同士の関わりが重要な理由。保育士目線で紹介!

子ども同士の関わりは子どもの成長において非常に重要です。

ぜひ、保護者の方、保育園や幼稚園の先生方、教育関係者の方に読んでいただきたいと思います。
今回は、子ども同士の関わりが重要な理由と、保育園での実践紹介、子どもたちの実際の姿についてまとめてみました。

なぜ子ども同士の関わりが重要なのか?

時代が進むにつれ、社会に求められる能力は変化していきます。AIの発展により、ロボット化や自動化が進み、これまで必要とされていた労働者がいらなくなりました。これからの時代は、これまで存在していた仕事がなくなっていき、新しい仕事が生まれると言われています。

新しい仕事で例を挙げると、YouTubeInstagramTikTokなどこれまで存在していなかった職業が生まれていますね。

このように、時代が変わることで、社会に必要な人材(能力)が変化し、それに伴って教育も変化しているのです。

これからの時代、社会で必要とされる能力は具体的にどんな能力でしょうか?

経済産業省「人生100年時代の社会人基礎力」

社会人基礎力とは、職場や社会で活躍するために必要な基礎的な能力のことで、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」として12の要素からなる3つの能力を経済産業省が定義しています。

これからの時代、社会で必要とされる人材になるためにはいくつか必要な能力がありますが、その中でもEQ力が重要です。EQ力とは、感情をコントロールして応用できる能力を指し、対人関係、対人能力を良好に発展させる基礎能力のことをいいます。

感情をコントロールする力は乳幼児期が重要

これからの時代にEQ力が必要だと書きましたが、そもそも人間社会で活躍していくためには、対人スキルは必須ですよね。そして、感情をコントロールする力がないと、殴る蹴るなどの暴力を振ってしまう人間になってしまいます。

実は、感情をコントロールする力は乳幼児期が非常に大事です。

脳の感受性グラフ

これは、2016年に行われた社会保障審議会児童部会保育専門委員会でも使われた脳の感受性に関する資料の図で、簡単に訳すとLanguageは言葉numbersは数量peer social skillsは社会性に関わる能力(同僚性)emotional control感情のコントロールなど。0歳~2歳がいかに重要かが分かりますよね。良く耳にする「2歳までが重要」などの言葉はこれが根拠になっているのです。

子ども同士の関わり合いで身についていく

2歳までが重要だということが分かりましたが、具体的に言うと、「子どもが体験すること」が必要です。

感情のコントロールで言えば、人には様々な感情があり、自分にも他者にも感情があることを知っていきます。そして、我慢したり相手の気持ちを汲んで譲ってあげたりなどそういった体験が重要なのです。

こういった体験は、昔は兄妹が多く地域との繋がりも多かったため、自然とできていたことかもしれません。しかし現代では、赤ちゃん時期に他の子と関わる機会は少なくなりました。だからこそ、保育園での子ども同士の関わり合いが重要であり、保育士は子どものためにも、関わり合いが生まれるような工夫や子どもの関わりから学びにつなげていく対応をしていかなくてはいけません。

子ども同士の関わりを生む工夫

子ども同士の関わりとは、具体的にどんな関わりでしょうか。相手がいて一緒に何かをする、おもちゃの取り合いをするなどのイメージが湧くかと思いますが、細かく言うと相手の遊びを見たり、相手に見られたり、笑いかけたりなども子ども同士の関わりと言えます。

子ども同士の関わりは幅が広く、日常の様々な瞬間に子どもたちは関わり合っているのです。

私たち保育士が大切にしていることは、大きく分けて2つ。子ども同士の関わりが生まれる環境作りをすること大人が介入するタイミングを見極めることです。

子ども同士の関わりを生む環境作り

例を挙げていくと、かなりの量になってしまいますので3つに絞ります!

保育室の環境
保育室内にある家具の配置の仕方を、工夫してみます。
例えば、背の低い家具を廊下や他のクラス側に置くことで、廊下を通る子どもや他のクラスの活動が見えるようになりますね。また、玩具も1人1つずつあるよりも、足りない方が子どもの取り合いが発生しやすくなります。そして、遊びを通して子ども同士の関わりが広がっていくこともあるため、ポストを設置してみる。作品の見本を掲示してみる。本を置いてみる。など、遊びが発展しそうな物を用意してみることで、「サンタさんに手紙を書こうよ」「クワガタを段ボールで作ろうよ」「○○の本に書いてあったよ」など子ども同士のやり取りが生まれます。やり取りが生まれることで、協力して遊んだり、友達に教えてもらったりなど子ども同士の関わりが増えていきますね。

手作りポスト
ブロック遊びをする子ども
絵を描く子ども

・保育の活動
日々の保育の中で、子どもが子どもに教えてもらう機会や、子どもが子どもにやってあげる機会を意識的に取り入れるようにしています。遊びの最中に、「せんせい、やって」と子どもが持ってくることがありますが、「あ~それ、先生も苦手なんだよね、、○○ちゃんが上手にできた気がする」と言ってみると、できる子ができない子に教えてあげる関わりが生まれるかもしれません。

また、泣いている子や困っている子を見かけた時に、「○○ちゃんが泣いてるどうしよう」「○○君が困ってる」など、他の子に言ってみると、話を聞きに行ったり、涙を拭くティッシュを持って行ったりすることがあります。
主活動でも、大人の説明を聞いて一斉に取り組ませるよりも、あえて好きなタイミングで取り組ませることで、子ども同士で関わるチャンスが増えるかもしれません。

・大人は環境の一部
保育をしている保育士や調理さん用務員さんなど、大人も環境の1部だと考えています。
一斉に保育をしていると、1人で子どもを見ないといけません。例えば、園庭から保育室に戻っている最中に、子ども同士のケンカが起きたとします。ケンカをしている子と、保育室に戻っていく子どちらも見ないといけないため、子どものケンカを早々に終わらせてませんか?
複数担任で保育をしていたり、担任以外の大人にその場を任せることが出来たり、大人たちの連携が取れていたら子どもたちのケンカを止めなくて済んだかもしれません。ケンカはお互いの感情がぶつかり合い、言葉で表現して相手に伝えたり、相手の意見を聞き入れたりと学びが沢山です。大人がサッと連携できることで、子どもたちの動きを制限することなく、十分に関わることを保障できますね。

大人が介入するタイミングを見極める

子ども同士の関わりが生まれる環境を作ることの大事さ、子どもの関わり合いをできるだけ止めず、保障してあげられることの大事さが伝わったでしょうか。

保育士として、2つ目に大切にしていることはどのタイミングで介入するかを見極めることです。
先ほど、できるだけ子どもの関わりを止めないと書きましたが、止めるべき場合もありますし、大人が介入することで、より子ども同士の関わりが発展していく場合もあります。

その見極めはかなり難しいですが、保育士は子どもにとってベストな介入を模索して保育しているのです。

 

介入のベストなタイミングを見極めるのは難しいため、「こんな時どうする?」をテーマに様々な場面での、それぞれの介入のタイミングや子どもを見る視点を職員間で共有しました。

どこに着目して保育するか?この場面を見てどう思うか?

子どもに介入するタイミング

止めるべき場合とは、ケガに繋がる時。具体的には、叩く、蹴るなど相手を傷つけてしまう可能性のある子がケンカをしている時や棒を持って鬼ごっこをしている時など、ケガに繋がると判断した場合は止めなくてはいけません。

介入することでより発展する場合とは、子ども同士のケンカで手は出ないけど、お互いに暴言を言い合うだけのような場面。自分の思いをぶつけるだけでは、なかなか発展しませんよね。そんな時、「○○ちゃんは取られたから怒ってるみたいだよ」「△△ちゃんは?」とあえて介入して、お互いの気持ちに気づく手助けをしてみるといいかもしれません。もしかしたら、ヒートアップしている熱を一旦冷ましてから、話し合わせるだけでもいいかもしれません。大人の声掛けやちょっとした対応で、子ども同士の関わりから学びへと繋がっていく場合は、介入したほうがいい場合もあるのです。

0歳児を連れて歩く5歳児

子どもたちの姿

実際に、子ども同士の関わりを十分にした子たちはどうなのか?違いはあるのか?気になりますよね。

私は、保育園にも学童にも勤務することがあり、卒園児を学童でも見ています。また、その学童は、4つの小学校から通ってくるので、通っていた保育園はバラバラです。そのため、保育園による子どもたちの姿の違いを知ることができました。

子ども同士の関わり合いが十分にできている子と、そうでない子の大きな違いは5つ。

・手が出ない。(言葉で伝えることが出来る)
・年齢、性別に関係なく一緒に取り組むことが出来る
・譲り合いができる
・相手の意見を汲むことが出来る
・大人にも意見出来る

この5つは、結構な差があるように感じています。子ども同士の関わりだけが原因とは言えませんが、保育園の時に年齢を超えて関わる中で、他者への気遣いや自分の気持ちに折り合いを付ける体験や協力する体験、みんなで一緒に取り組んだ成功体験などが小学生になった時の姿に表れているように思います。

まさに、保育園での体験から、これからの時代に必要なEQ力が身についているのですね。

子ども同士の関わり まとめ

1,これからの時代は、人と関わる力が重要!
2,人と関わる力は、乳幼児期に育つ!
3,乳幼児期に子ども同士で関わることが重要!
4,保育士は子ども同士の関わりを生む工夫が必要!
5,保育士は子どもに介入するタイミングを見極める!
6,保育園の違いが小学校に上がってから顕著に表れる!

以上、子ども同士の関わりをテーマに書いてみました。私の勤めている園では、子ども同士の関わりはかなり重要視しているため、職員間でもどう関わるべきか?どんな環境が適切か?などの話合いをしています。
ハッキリ言って、正解がありません。しかし、大事なのは何がより適切なのか考えて保育することじゃないでしょうか?
考えて保育することで、保育士としてスキルアップするし、子どもにとっても良い保育になっていけると思っています。