芋作りに挑戦して販売したい⁉学童保育の実践を紹介します!

「芋作りをしたい。そして売りたい。」

ある日、小学5年生から上がった意見です(笑)
私の勤める学童では、子ども主体の保育に力を入れており、子どもたちが主体的に取り組めるように、支援員みんなで保育環境を整えたり、子どもたちが自分で考え取り組めるような関わりをしたりしています。
「こうしなさい」「こうしたほうが良い」と口出しするのは、子どもの成長を奪ってしまうからです。

以前は、一斉に取り組むような保育内容でしたが、3~4年前から「子ども主体の保育」へと変えていきました。
それに伴って、子どもたちの姿も激変しています。

今回は、「自分たちで芋作りをして販売する」という目標に向けて取り組んできた子どもたちを紹介します。

芋を作って販売したい。

「芋作りをしたい。そして売りたい。」

なぜ、このような意見が子どもたちから出たのか?まずは、経緯を紹介します。

私の勤める学童は、子ども主体の保育へとここ数年で変わっていきました。当初は、子どもたちがすべて大人任せで、「ひまい」「つまらない」「なにかして」などの言葉ばかり‥‥。

また、自ら「○○がしたい」という提案すらなく、支援員が「○○したくない?」と聞いても、「やってみたいけど、どうせできない」など、ネガティブな意見が帰ってきます。

「どうせできない」「どうせダメって言われる」などのネガティブな言葉は、大人主導で一斉に保育や教育を受けた子たちに多い気がします。自分の意見を大人に聞いてもらえないことの方が多かったのでしょうか…💦

そこで、学童に通う子どもたちが、自らやりたいことを提案できるようになるために、試行錯誤して取り組んできました。

少しずつ少しずつ、子どもからの意見が増え、今では年間の行事予定や長期休みや土曜日の保育の内容など、子どもの意見を基にして実践しているものばかりです。どのくらい変わったのかを分かりやすく言うと、当初は子どもからの提案が2カ月に1件程度。今では1日に10件くらいでしょうか。

先日、支援員の1人が、「子どもの意見が増えすぎて回答・返事が忙しい」と言ってましたが、めちゃめちゃ良い悩みだと思います(笑)

そんな感じで、取り組んできたある日「芋作りをしたい、販売したい」という意見が出たという訳です。

芋作りを実現させてあげたい支援員たち

子ども主体の保育は、子どもから意見が出ることは大事ですが、意見が出た後がさらに大事で難しいですよね。
この意見に対して支援員側がとった行動は、まず学童で芋作りができるのかどうかを検討しました。学童には、畑がないため芋作りができる場所を探してみたり、近所の人に相談したりなど。

すると、学童のすぐ近くの農家さん(Hさん)が畑を貸してくれるとのことで、どうにか芋作りは出来そうだということになりました。

畑を貸して頂く話をつけ、芋作りの手順や植え付け時期や方法などを私たち支援員が教わります。

教わった内容を踏まえながら、子どもたちには「どんな風に芋作りをしようと思っているのか?」「芋作りには何が必要だろう?」など子どもたちなりの考えを聞き出しながら、「畑が必要だ」という話に持って行きました(笑)

「そう言えば、○○さんが学童の子どもたちに農業を教えたいって言ってたよ」
「もしかしたら貸してもらえるかもしれないよ」

そんな会話をしながら、子どもたちがHさんに畑を貸してもらうためにお願いに行くということになりました。

芋作りはプロの意見を参考に!

ある日、Hさんを見かけた子どもたちは、芋作りをしたいメンバーでお願いに行きました。
快く承諾してくださり、芋作りが現実的になってきた事で、子どもたちのやる気も高まります。

子どもたちは、自分たちのクロムブックを使い、芋作りについて調べノートにまとめすべきことを洗い出していきます。

また、Hさんを見かけると、「どんなものが必要ですか?」と質問する姿もあり、着々と準備を進めて行きました。

支援員に対して、「畑作業に使うクワと、芋の苗を〇月〇日までに用意してほしい」と子どもたちからの要望があり、この要望に対してどうすべきか検討します。

私たち支援員も素人なので、Hさんにクワの購入が必要なのか?苗はどれくらい購入すべきか?など質問させてもらいました(笑)結局、道具も貸してもらい、苗も農家さんの余りものを頂くことになりました(笑)ホントにありがたい限りです。

そして、Hさんが子どもたちに畑の耕し方や苗の植え方などもレクチャーしてくれるとのことで、子どもとHさんとの日程調整をし、Hさんに直接教えてもらいながら苗の植え付けを行いました。

芋を植える子ども
芋を植える子ども

「苗の植え付けをした後は、基本的に草取りをするだけで良い」

そう教わった子どもたちは学校から帰ると草取りに行くようになりました。

しかし…、続いたのは数日間のみ(笑)ほとんどほったらかし状態の畑でしたが、私たちもそれには触れずに放置していました。
失敗しても学びに繋がるため、収穫まで大人は介入しないことにしたからです。

収穫

さて、ほったらかし状態の芋畑でしたが、収穫の時期が近づいてきました。
収穫の時期になると、「収穫しないと!」と1人が言い出し、連鎖的にやる気が出てきているようでした(笑)

ある子が、Hさんに「そろそろ収穫していいですか?」と尋ねに行き、OKを貰って、収穫する日をみんなで話し合います。

そして、「来週の土曜日の10時から収穫しよう」「手袋とスコップを用意しよう」と決まりました。

 

 

そして収穫の日。

芋を収穫する子ども
芋
収穫した芋

いざ収穫してみると、ほったらかし状態で育った芋は、びっくりするくらい元気で大量でした(笑)

Hさんのお話では、芋作りはほとんど手を付けなくても成功しやすいみたいです(笑)

大量に取れた芋は、箱にしまい新聞紙で光を閉ざし保管します。子どもたちは、日光に当てたらいけないこともちゃんと調べていたようです。

芋作りに携わっていない子どもたちも、芋の収穫には興味を持ち大量に獲れた芋を見て、 「焼き芋しよう」「スイートポテトにしよう」などと言っていましたが、芋作りメンバーから「商品だからダメ!」と怒られていました。販売したい熱は、まだまだ覚めていないようです(笑)

販売する

どうやって販売するつもりなのか?と子どもたちに聞いてみると、「先生に売る」「保護者に売る」ということで、私たちに買わせようとしていたみたいです(笑)

まあ、それも有りだけど(笑)

ですが、収穫時期のちょっと前頃に、「地域の祭りに学童として出店をしてほしい」という誘いがあり、そのことを子どもたちに伝えると、その祭りで販売するということで意見がまとまりました。

祭りの主催者側には、「参加させてほしい」と伝えるとともに、「子どもたちが大人の手を借りずに自分たちで出店をしてみたい」という意見を伝え、事前に了承してもらっています。

当日の祭りの規模や出店テントの広さなどの情報を聞き、子どもたちにも伝えて、あとは任せることにしました。

 

子どもたちは、芋作りメンバーで話し合いを重ねて、「芋だけだと売れないかもしれない」「他の商品も必要」という答えを出し、支援員に「芋の販売とクジで出店をやりたい」と伝えてくれました。

具体的な方法を聞くと、「学童から1万円借りて商品を買って、出店の後に1万円学童に返すとのこと」

「いいね!やってみよう」ということで、その案を承諾しました。

子どもたちは、保育園や学童に届く、業者のカタログを見ながら商品を選んでいきます。販売予定数は50人で考えているそうで1回200円くらいのクジで考えているそうです。

子どもたちが選んだ商品が届くと、商品を袋に詰めていく作業とクジの使うガチャガチャの準備、出店に使う看板や接客方法など準備を進めていきます。
そんなこんなで準備を終えて、あとは祭り当日を待つだけとなりました。

出店準備
出店準備をする子ども

祭り当日

祭り当日の日、学童を代表して高学年が出店に行くことは、学童の他の子どもたちも把握していました。
「頑張って~」と見送られながら出発します。

祭り会場に着くと、祭りの規模の大きさに驚きながらもテントの飾りつけや商品の陳列など準備を進めます。

出店
いも商品

隣のテントはガチガチの的屋さんで5名の大人たちでしたが、全く臆することもなく準備を進めていました。「なんの出店ですか?」など自分たちから話しかける姿もあって堂々としている姿には私もびっくりしました(笑)

子どもたちの出店がどうなるのかは私も予想できませんでしたが、主催者側の計らいで学童の子どもたちが自分たちで計画し、出店していることを宣伝してくれたこともあり、プチ行列ができるほど人が集まりました!!

初めての接客に、初めての出店でしたがクジ担当、商品渡し担当、お金担当、芋販売担当など自分たちで役割分担して、テキパキと動いています。
自分たちも出店を回りたいということで、半分に分かれて祭りを楽しむ余裕もありました(笑)

子どもたちの出店
お客さん対応中
他の学校の小学生も来店

結局、用意していた商品と芋はすべて完売。

「もっと芋もってくれば良かったね~」など話しながら、片付けをして学童に帰りました。

芋作りを通した子どもの成長

芋作りをしたい!そして販売したい!という子どもの提案から、半年かけての取り組みが見事成功しました。
子どもたちが自分たちだけで挑戦し、やりきる方向で進めてきましたが、かなりの自信になったことは間違いないです。

また、自分たちの意見や考えが形にできた成功体験は、子どもたちにとってかなり貴重な経験になったと思います。こうした体験は、学童だけでなく学校生活でも、部活でも、将来の職業でもきっと役に立つはずです。

教育には「子どもの主体性」が大事だと言われていますが、自らの考えを形にして最後までやりきる経験こそが主体性であり、大人が介入することで貴重な体験を奪うことにもなりかねません。

私の勤める学童では、子どもの主体性を重んじ、支援員としてどう子どもたちと関わるべきかを模索しながら保育しています。
子ども主体の保育を実現するために、クエストという取り組みに力を入れており、クエストを取り入れた結果、子ども主体の保育を実現することができました。

クエストの詳細記事はこちらです!

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今回は、芋作りがきっかけになりましたが、他にも子どもの提案がきっかけになった取り組みは多いです。具体的な保育内容を記事にしていこうと思っていますので、お読みいただけるとありがたいです!