AIの普及により、ChatGPTをはじめとした生成AIは、私たちの生活の中で身近な存在になりました。
子どもたちもスマホやタブレットを使いこなし、小学生になると授業や宿題でChromebook(クロームブック)が必須です。
そんな時代を迎えましたが、AIと子どもの育ちについて保育士目線で考察してみます。
AIは子どもにとって良い悪い?
結論から言えば、AIは使い方次第です。ただし、子どもの成長という視点では、現時点では注意すべき点が多いと感じています。
AIの普及により社会に求められる力は変化しました。現代では、SNSで稼ぐ人も大勢いますし、保育園でも動画編集や発信は必須スキルになりつつあり、AIを活用することで、文書作成などの業務効率は大きく向上しました。
そのため、これからの時代を生き抜く子どもたちにとってAIを使いこなす力は必要であると言えますね。
ではなぜ、冒頭で「注意すべき点が多い」と書いたのか…。それは、体験が不足してしまう危険性があるからです。
AIのデメリット
最近、保育園の仕事でもAIを活用する場面が増えました。例えば、文書作成や行事のイラストなどです。効率が上がり業務も楽になったのは事実ですが、同時に怖さも感じます。
例えば、私が保育士になりたての頃、保護者に向けて出す手紙の文章は、自分で考えて作成し、上司にチェックしてもらい、修正するという流れでした。当時は、今よりも誤字脱字が多く表現の仕方も乏しかったため、添削箇所がかなり多かったです。しかし、添削される度に学び、次につながっていました。
最近では、立場が変わりチェックする側になりましたが、新人職員の持ってくる文章の完成度に驚きます。AIを使っているそうです。「便利な時代になったな」と感じる一方で、少し複雑な気持ちにもなります。
AIに文章を作らせることはできても、「その内容が園の保護者に合った内容なのか?」「読み手側に誤解なく伝わるだろうか?」などの判断まではAIにはできません。また、AIが使えない場面では、自分の言葉で相手に伝えなければならない場面もあります。
AIを活用することが当たり前になると、成長の機会や努力する必要性が薄れる気がします。これが怖いなと感じる理由です。
子どもの成長には体験が重要
AIは短時間で答えを教えてくれます。しかし、子どもの成長に必要なのは「答え」だけではありません。私は保育士として、子どもの成長には実体験が最も重要だと感じています。
保育園や学童では、棚やテーブル、虫網など自作する場面があります。子どもたちも手伝ってくれますが、やっぱり難しいようです。AIやYouTubeを使うと、作り方の手順や必要な材料などが瞬時に出てきます。子どもたちは「もう作り方分かった!できる!」と言って取り掛かりますが、そんな単純な話ではありません。ノコギリを例に挙げると、押す時は脱力し、引く時に力を入れないと切れません。また、木材をしっかり固定しないと切れないことや身体の向きとノコギリの向きを合わせないと力が入らないことなど、やってみて初めて分かることがたくさんあります。
このように、初めて挑戦することのほとんどが上手くいきません。そして、2時間くらいで終わるかなと思ってやってみると、半日や2日かかるなど想定の甘さにも直面します。この実体験こそが学びであり成長です。
そのため、保育園や学童では、子どもが自ら体験できる環境を用意することに力を入れており、存分に挑戦し、失敗してほしいと思っています。


保育園の時期に様々な体験を積み重ねることは、小学校の学習面にも影響を与えるかもしれません。学童で子どもたちの宿題を見ていると、足し算引き算で躓く子を見かけます。文章問題を読んで、増えるのか減るのかがピンとこないみたいです。しかし、保育園生活の中で、お友達からブロックを貰った体験、お店屋さんごっこでお友達に商品を渡した体験、おやつの残りをお友達とどうやって分けようか悩んだ体験を重ねている子は、増えるのか減るのかがイメージしやすくスラスラと解いていきます。

実際に実体験が学びに繋がる例で分かりやすいのが、学童内でのお店屋さんごっこです。これまで、カフェや雑貨屋さん、スクイーズ屋さんなどが出店しました。学童内通貨のやり取りを帳簿に記録して売り上げの合計金額を出し、スタッフで分配したり、どうすればもっと売れるのか作戦会議をしたりしています。こうした体験を通して計算の必要性や記録を残すことの大切さ、他者と協力することで大きな目標を達成できること、計画・実行・反省のサイクルなどを自ら学んでいっているのです。


AIとの付き合い方
保育士目線にはなりますが、なんでもやってあげる人やいつでも答えを教えてくれる人、常に自分に賛成してくれる人が常に側にいるのはかなり危険だと思います。過保護な大人や大人への依存は子どもが成長する機会を奪ってしまうことに繋がると考えているからです。子どもに限った話だけでなく、職場でも上司が指示を出しすぎると部下が成長しないと言われるのと同じで、AIに頼りすぎることで自身の成長機会を失うことに繋がりかねません。
AIを使おうが使わまいが、最終的には自分自身で考えて判断しなくてはいけません。
AIとの正しい付き合い方としての結論を出すのは難しいですが、最終的には自分自身で判断し、責任を持たなくてはいけないという点だけは全ての人にとって大事な部分ではないでしょうか。その点を気を付けていれば、AIに新たな視点からの意見を求めたり、情報を分析してもらったりする分には問題ありませんし、むしろ自分の考えを深め、視野を広げるためにもってこいのツールだと思います。そういったAIとの付き合い方を子どもたちにも伝えていくことが必要なのかもしれませんね。
終わり