同調性は、日本人の悪い点で挙げられることが多いです。
しかし、保育園や小学校教育を見てみると、同調性が育つ仕組みになっている気がします。
その反面、社会人になると同調性ではなく、自ら考えて動く力や周りと協力することができる力が求められます。
私の勤める保育園と学童の保育方法は、こうした同調性を育ているのではなく、子ども1人1人が主体的に活動できるようになることや子ども同士が協力し合うことができることに力を入れる保育です。
保育方法を変え、工夫を重ねていくうちに明らかに子どもたちの姿が変化しました。
今回はこの同調性について紹介したいと思います。
同調性とは?
同調性とは、集団の行動や態度に合わせたり、多数派の意見に流されたりすることを意味します。日常的に頻繁に見られる心理現象で、心理学では「コンフォーミティ(conformity)」とも呼ばれます。
周りと協力できる力の「協調性」や「協同性」といった言葉と似たように聞こえますが、「協調性」とは、様々な価値観や考えを持つ人たちと折り合いをつけ、時に周囲を説得しながら、一つの目標に向かっていく力のこと。そして「同調性」とは、ただ周りと同じことをする。自分に意見があってもそれを軸とせずに、周りに合わせることを指します。
同調性=「みんながそうしているから私もそうします」
簡単に言うとこんな感じです。
同調性が悪く捉えられる理由
同調性は日本人の特性でもあり、海外から指摘されています。
なぜ同調性が悪く捉えられているのでしょうか。同調性のデメリットを3つ紹介します。
2,何が正しい選択であるのか判断がつかなくなる
3,新しいことに挑戦しようとする意欲が薄れる
周りに同調しすぎてしまうと、自分で考えたり決定したりする力が弱くなってしまうデメリットが生じます。周囲の多数派の意見を無意識に正しいと思い込むようになり、たとえその決定が間違っていたとしても、自分で正しい選択を行えなくなる恐れがあります。
そして、周りに行動を合わせすぎてしまうことによって、他人とは異なる選択をするのに恐れが出てしまい、新たなことにチャレンジする意欲が薄れてしまう傾向も見られます。
読んでいる方も当てはまる方が多いのではないでしょうか。
私も、赤信号を無視して大勢の人が渡っている場面で渡ってしまいますが、これは同調性が働いているからですよね…。
同調性がもたらす職場のデメリットについて紹介しているサイトがありました。すごく共感できる内容でしたので、紹介させていただきます。
保育や教育が同調性を育てている?
冒頭に書きましたが、日本人の同調性という特性は、教育の中で育まれているのかもしれません。
「みんなと同じようにできなければいけない」
そんな風なプレッシャーを感じたり、暗黙のルールの中で育ってきませんでしたか?
優秀と言われる人は、勉強ができ、大人に対して従順で言われた通りのことができる人だったように思います。
反対に大人に対して意見をする人は、反抗的だと不良扱いされやすかったのではないでしょうか。
今になって、子どもの個性や1人1人の主体性を重んじる教育へと変化してきていますが、まだまだ同調性を刷り込んでいる場面が多いと感じます。
学童に通っている子どもたちが「○○したら怒られるかな?」「怒られたんだけど意味わからん」など言ってくることがあります。話を聞くと、子どもたちなりに考えて行動したつもりが怒られてしまった…というものでした。
「なんで説明しなかったの?」「理由を言ったらいいじゃん」と言ってみるものの、「どうせ○○だから」と諦めています。
小学校は一斉授業で1人の担任の先生が複数の子どもたちを見ています。それ故に、大人が指示を出したことを言われた通りに取り組まないと叱って制御してしまっているのです。そうやって育った子どもたちは、「大人に意見するのは良くない」「自分1人の意見では変えられない」とそんな姿になってしまいます。
まさに、同調性が悪く捉えれている3つの理由に当てはまっています。
子ども主体の保育で育った子どもたちの姿
子ども主体の保育で育った子どもたちの大きな特徴が、子ども同士でも大人が相手でも、自分の意見を言えることです。
私の勤めている保育園や学童の子どもたちは、大人に対してもズバッと言ってきます。
しかし、反抗的という訳ではありません。大人側の意見や理由を伝えると、理解してくれたり折り合いを付けてくれたりします。
同調性ではなく、協同性や共感性などが育っている証拠ではないでしょうか。
学童保育では、日々の活動に子どもたちからの提案があふれています。
最近の例を挙げると、「ポップコーンを栽培したい」「アリの飼育をしたい」「カレーをみんなで作りたい」「昆虫採集に○○に行きたい」「カードゲームの大会を開きたい」など。
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5年ほど前に、学童保育も一斉型の保育方法から子ども主体の保育方法へと切り替え、工夫を重ねてきました。
切り替わったばかりの頃は、子どもからの提案は皆無です。
「どうせ○○できないんでしょ」「ひまいから帰りたい」などネガティブな言葉であふれていました。
まずは、子ども主体の保育をするために子どもたちに遊びや活動の選択肢を用意し、子どもたちと同じ目線で、学童で集団で過ごすためのルールを作り、子どもたちから提案できる機会や環境を作り、大人と協議する機会を作ります。
当然、子どもの意見をどこまで聞くか?大人の意見をどう伝えるべきか?など課題だらけでしたが、1つずつ1つずつ解決していき、学童職員の保育スキルも高まり、子どもたちの姿も変化していきました。
今では、これまでなかった活動がどんどん提案され、子ども同士で協力し合ったり、活動を実現させるために大人を説得しに来たり、毎日が充実しています。そんな学童での生活を通して、試行錯誤を凝らし、夢中になって遊び、子ども同士で助け合うなど主体性や思考力、協同性など社会に必要なスキルを体験を通して培っている気がします。
子ども主体の保育についてまとめた記事もぜひお読みいただけると嬉しいです!
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一斉型から子ども主体へ
学童保育が一斉型から子ども主体の保育へと改革した手順を紹介します。
1,子どもの選択肢を増やした
⇒これまで大人が中心になって、活動や遊びを決定したり企画したりしていたのを辞め、子どもたちが選択できる遊びを増やした時期があります。まずは、選択肢が充実していないと、子どもが自ら遊んだり取り組んだりする姿は生まれません。
2,集団生活に必要なルールを明確にした
⇒子どもが選択できるようになると、秩序が乱れてしまうため、安全性を守るための決まりや、遊びかたの決まりなど集団生活に必要な決まりを子どもたちと一緒に話し合って定めました。子どもたちの安全性を守るために、熱中症対策の決まりや川遊びの人数制限などは、大人が決めることもありますが、子どもたちに理由をしっかり伝えているため反発することはなく、ルールを守ろうとしてくれています。
3,子どもたちが意見できる環境を作った
⇒朝の集まりの時間に、子どもたちから全体に向けて話ができる時間を設けています。また、意見箱というのを設置し大人に提案したり相談したりすることができる環境も作りました。低学年からも「○○をしてみたい」など意見が挙がってくるため、大人同士で協議します。意見すればなんでも通るのではなく、難しいのであれば理由を伝え一緒に考えます。大事にしたいのは、意見を蔑ろにしないことで、ちゃんと聞いてくれた体験や、一緒に考えてくれた体験などは子どもたちにとって非常に重要です。
4,子どもの意見を基にした行事
⇒これまでの行事は、大人が企画したものを子どもたちに楽しんでもらう形でした。今では、行事の告知は大人側がしますが、行事の企画や準備、運営などは子どもたちがやっています。大人は子どもたちをサポートすることに徹します。
5,子ども同士で助け合う仕組みをつくった
⇒子どもたちの遊びが充実し、活動にも幅ができてくると大人だけでは対応に困ることがあります。そのため、高学年や得意な子にも他の子をサポートしてもらうように促したり、資格を作り子どもにも大人の代わりができるような仕組みを作っています。
より遊びが充実し、子どものやる気も高まっているため効果的です。
同調性は教育がカギ
今回は同調性をテーマに書いてみました。
日本人の悪い特性と言われている同調性ですが、幼少期からの教育の中で刷り込まれている可能性が高いです。
社会に出た時には、同調性ではなく、自ら考えて動ける力が求められます。近年、教育が見直されつつあり、こうした主体性や他者と協力できる力を育もうとする動きが強くなってきました。
子どもたちの未来を考え、保育や教育の中で必要な体験を積み重ねられることが何よりも重要で、私たち教育者はそんな教育の場を作っていく事が使命だと思います。