ヨコミネ式 保育のコツ。『4つのスイッチ』

ヨコミネ式 保育という言葉を聞いたことはありますか?

フィギュアスケートの紀平梨花選手がヨコミネ式保育で育ったことで有名です。この教育法は、プロゴルファー横峯さくら選手の伯父である横峯吉文氏が提唱しました。日本全体には400か園以上のヨコミネ式の保育所があるそうです。

私の勤めている保育園はヨコミネ式ではありません。

 

最近、ヨコミネ式を実践されている保育士さんを園に招き、ディスカッション形式の研修を行いました。その研修で、いくつか気になった点があったのでヨコミネ式保育の本を読んでみることにしました。

ヨコミネ式=運動特化型保育(スパルタ)

という固定概念を持っていましたが、実際は違うみたいです。

ヨコミネ式の特徴

・逆立ち歩きができる
・跳び箱10段が跳べる
・文字の読み書きができる
・1.8kmのマラソンを走る
・そろばん1級に合格
・英検3級に合格
・絶対音感が身につく

これだけ読むと、小学校入学前の子どもたちの話とは思えません。英才教育の教育方法なんだろうという印象を持ちながら、本を読み進めてみましたが、保育園の環境構成やカリキュラムが他の保育園とは大きく違います。

簡単に紹介すると、保育園での活動は、毎日、読み・書き・計算・運動などを20分ずつ取り組んでいるそうで、毎日の繰り返しで習慣付けることを大事にしているそうです。
ただし、子どもたちが自ら『やりたい』と思えるように仕掛け作りに力を入れ、『遊びながら学ぶ』ことを重視します。

『大人が教えたらやりたくなくなる』

『教える必要はなく、手本を見せる。認める。』

というような言葉が何度も出てきていました。子どもの自主性を大事にしていることがわかります。

ヨコミネ式の『4つのスイッチ』

1,子どもは競争したがる
2,子どもは真似したがる
3,子どもはちょっとだけ難しいことをしたがる
4,子どもは認められたがる

ヨコミネ式保育が大事にしている、子どもをやる気にさせる4つのスイッチを紹介していきます。

 

1,子どもは競争したがる

⇒『あの子のようになりたい』『あの子に勝ちたい』という気持ちが原動力で、あえて順位付をするそうです。勝つ、負ける体験を大事にして子どものやる気に繋げます。負け続ける子がいる場合は、ハンディキャップを用意することで勝つ体験ができる。

 

2,子どもは真似したがる

⇒子どもが真似をするのは本能。あんな風になりたいという気持ちを大事にして、大人が見本を見せたり、子ども同士で見本を見せたりします。『教える』ではなく、自ら真似をしたがる工夫が大事。

 

3,子どもはちょっとだけ難しいことをしたがる

⇒簡単すぎると飽きる。難しすぎると挑戦しない。子どもは難易度を見抜くことに長けており、達成できないことはやらない。簡単すぎず、難しすぎない程度の課題は夢中になって取り組む。

 

4,子どもは認められたがる

⇒『赤ちゃん扱い』はせずに、『お兄さん・お姉さん扱い』する。褒めることよりも認めてあげる方が大事で、子どもが『認められた』と思える仕掛け作りが大事。

 

このヨコミネ式の4つのスイッチは、横峯吉文さんの子どもの捉え方のセンスが表れていると思います。保育士の皆さんは『たしかに!』と共感される方が多いのではないでしょうか。子どもと接する人が感じている感覚的な関わり方のコツを言葉に替えて、保育方法として形にしているためスッと理解しやすい内容です。

本の中には、4つのスイッチ以外にも、具体的な保育方法など書かれていましたが、今回は4つのスイッチのみの紹介にしておきます。

 

他の保育から見たヨコミネ式保育

私の勤めている保育園の考え方と比べた視点で見ると、子どもの主体性を大事にした視点など重なる点が多くありました。

1番の違いを挙げるとしたら、伸ばそうとしている子どもの能力の違いだと思います。もちろん、読み・書き・計算・運動・音楽など、あのレベルまで子どもの能力を引き出せるのは素晴らしいことだと思いますが、私の勤めている園では、他者と関わる力や自ら考えて行動する力、創造性など目に見えない点を特に大事にしています。

 

どちらが正しいと決めることはできませんし、どちらの保育も子どものことを考え抜いてできた保育のはずです。1つだけ、はっきりと言えることは、時代が変化し子どもの育つ環境も変化し、社会で必要とされる能力も変化しています。だからこそ、子どもの将来を見据えて保育も変化していくべきだということです。

今回、ヨコミネ式の保育を知り、自園の保育に生かせそうなヒントを沢山得ました。保育の良し悪しを決めつけず、良いところは吸収していけるような柔軟な保育園が子どもにとって最善の保育なのかもしれません。

本を読むまでは、ヨコミネ式=運動特化型保育(スパルタ)という固定概念を持っていましたが、結果的に学ぶことが多かったです。他の保育との交流や意見交換は、自園の見直しと新たな視点を生むことが分かりました。今後、本だけでなく、そういった機会を作っていけたらと思います。