過保護は子どもの育ちにどんな影響があるの⁉【保育士目線】

過保護な親、過保護な保育士になっていないか気にしたことはありますか?
私は保育園に勤めており、様々な子どもたちと関わる機会があります。
そうした関わりを通して、大人の過保護な関わり方の影響を感じる場面も多いです。

今回は「過保護」とは何か?どんな影響があるのか?子どもとの関わり方で大事なポイントについてまとめました。

過保護とは?

まず、『過保護』とは、子どもを必要以上にいたわって育てることです。
子どもを必要以上に守ったり、甘やかしたり、子どもの意見を尊重しすぎたりすることなどを指します。

 

もっとイメージしやすいように、子どもと大人の関わりの場面を例に挙げてみましょう。

・ちょっと転んだ子どもに対して、大人が駆け寄って「大丈夫?ケガしなかった?」と声をかける。
・衣服の着脱や靴を全部手伝ってあげる。
・買い物中に「買って」と言われたら買ってあげる。
・ちょっとした移動でも抱えて連れて行く。
・我がままな意見も聞き入れてあげる。

こんな感じでしょうか。

過保護とは、親子間の関わりだけでなく、保育士と園児との関わりでも該当しそうですね。
というよりも、このご時世、保育園や小学校に対して、過保護な関わり方を求める人が増えたのかもしれません。少しケガをするだけでも大事になりかねませんし、「先生が嫌だから、○○の授業が嫌だから学校に行かない」と理由をつけて小学校を休む子が増えたと耳にします。また、小学校に保護者が送り迎えしているのも当たり前の光景になってきています。

保育園や学童に勤めていると、自分が子どもの頃との違いに驚くことが多いです。

0歳児を連れて歩く5歳児
大人が介入しすぎないことで、保育園の年長さんたちがお世話してくれる場面も生まれます。

過保護に育った子の特徴

ここからは、過保護がもたらす影響についてです。

すべての子どもに当てはまることではありませんが、より多く見られる姿を紹介していきます。

我がまま、切り替えができない

少しでも自分の思った通りに行かないと、ギャーギャー泣いて騒ぐような姿です。保育園でもよく見られる光景ですが、「1番が良かった」「○○ちゃんと一緒にじゃないと嫌」など自分の都合だけを通そうとして、集団生活のルールや他の人のことを考えて割り切ることができません。泣けば大人がどうにかしてくれると思っている節も見られます。

 

できることが少なく周りよりも幼い

同年齢の子どもたちと比べて、衣服の着脱や靴を履き脱ぎなど自分でできることが少ない傾向にあります。さらには、興味を示さなかったり、無気力な子も希に見られます。普段から大人にやってもらうのが当たり前になっていると、自分で出来るようになるチャンスが少ないということです。また、出来るようになりたいという意欲も弱い気がします。そんな積み重ねが、出来る出来ないだけでなく、歩く距離などの運動能力にまで差が出ることもあります。

 

他の子との関わりが乏しい

上記で紹介したことが原因となって、他の子と上手に関わることができない姿も多く見られます。そのため、遊び込んだり活動に熱中して取り組んだりする姿も少なくなり、何もせずにウロウロしたり、いつもトラブルの中心になっていたりすることも。
遊びや活動に集中して取り組めないということは、体験して学ぶ機会も少なくなってしまうということです。

 

必ずしも、このような特徴が見られるという訳ではありませんが、保育園では割と多く見られる姿だと思います。
そして、子どもと保護者との関わりについては、保育園側から意見しにくい点でもあるため、直接的に保護者に伝えることは少ないです。保育園で”気になる子”と言われる子たちの姿には様々な原因がありますが、家庭での大人との関わり方は大きな原因の1つと言えるでしょう。

子どもとの関わり方のポイント

ここまで、過保護に焦点を当てて紹介してきました。
大人が子どもに干渉しすぎると子どもの育ちに悪影響があるということでしたが、反対に無関心すぎるのもやっぱりよくありません。子どもに対して無関心すぎると、愛情不足が原因で気になる言動が目立ってしまうことにもなりかねません。

難しいですが、過保護すぎず、無関心すぎずといったバランスが必要なのです。

私たちの保育園でも、子どもとの距離感や関わり方については常に悩みの1つであり、話し合いや試行錯誤を繰り返しながら、目の前の子どもに適切な関わりを追求していってます。

私たちが保育中に大事にしている、子どもとの関わり方を紹介しますね。

 

メリハリを大事にする

乳幼児期から、良い事と悪い事の線引きは、はっきりと子どもたちに伝えるようにしています。
例えば、「相手を傷つける行為」。人として誰かを傷つけるのはダメだと、ちゃんと大人が伝えるべきです。また、子どもの意見を尊重することも大事ですが、どうしても聞き入れてあげられない場面もありますよね。「できなものはできない」とはっきり伝えることも大事です。保育園は集団生活の場ですので、「今は○○の時間だから、今はできないよ」「他の人もいるから、○○君の言うことだけを聞くのはできないよ」など、できない理由まで説明してあげることを大事にしています。

 

応答的に関わる

私たちの保育園では、必要以上に介入・援助しないようにしています。
子どもが自分でやろうとしている時に、「できないだろうから」と大人が手伝ってしまうと、せっかくの成長の機会を奪うことになりかねません。子どもは、できないから手伝ってほしい時や、助けて欲しい時などは、大人に合図を出します。その合図があった時には、すぐに応えてあげたり、反応したりすることが大事です。しかし、大人から先回ってなんでもやってあげていたら、その合図すら出さなくなってしまいます。例えば、3・4・5歳児になった時に、いつまでも泣いて大人が駆けつけてくるのを待っているような姿は、大人に依存していると言えるかもしれません。子どもの自立を促すためには、応答的に関わることはすごく大切だと思っています。

 

まとめ

今回は、「過保護」をテーマに保育士目線で紹介しました。
子どもに対して過保護に関わりすぎると、子どもの育ちに悪影響を与えてしまう可能性は大きいです。

最後に子どもとの関わり方のポイントを紹介しましたが、『自立した子どもを育てる』という意識を持つことが重要だと思っています。いつかは保育園を卒業し、小学校、中学校と進学していきますが、いつまでも私たちが側で支え続けることはできません。

だからこそ、保育士に依存させてしまってはいけないと思っています。自分で気持ちを切り替えたり、乗り越えたりしていけるように育ててあげることが私たち保育士の役目なのではないでしょうか。