養護と教育 って?今さら聞けない保育の基本!

養護と教育は、保育の世界でよく耳にするフレーズですよね。
でも、説明できるくらい理解しているか?と聞かれると、自信がない人もいるのではないでしょうか?

私は自信がありません(笑)

保育所保育指針の言葉って固いので、いざ自分の言葉で説明するとなると難しいんですよね…。
今回は、私自身の勉強の意味で、養護よ教育を分かりやすくまとめてみたいと思います!

がっつり、保育士さんや保育関係者に向けた記事です💦
興味のある方は読んでいただけると嬉しいです。

養護と教育とは?

保育士なら誰でも耳にしたことがある、養護と教育。そもそも、養護と教育という言葉を耳にする機会が多いのはなぜでしょうか?
答えはシンプルで、保育=養護と教育が一体となったものだからです。

保育所保育指針にも、保育に関する基本原則の中に、「保育所は…養護及び教育を一体的に行うことを特性としている」と記載されています。続いて、養護に関する基本的事項・幼児教育を行う施設として共有すべき事項の中に、養護の捉え方や教育の捉え方が記されています。

まず、保育とは養護と教育を一体的に行うものだということを押さえておきましょう。

養護と教育の「養護」について

保育における養護とは、子どもの生命の保持及び情緒の安定を図るために保育士等が行う援助や関わりであり、保育所における保育は、養護及び教育を一体的に行うことをその特性とするものである。保育所における保育全体を通じて、養護に関するねらい及び内容を踏まえた保育が展開されなければならない。ー保育所保育指針抜粋ー

保育所保育指針に書かれている言葉が難しい・・・。
簡単に言い換えると、子どもの安全を保障し、子どもが安心して保育園で生活できるようにすること。そして、保育所保育指針に書かれている養護に関わるねらい及び内容をクリアしていないといけませんよ!ってことです。

養護に関わるねらい及び内容

長いですが、指針にはこのように記されています。

もっと読んでみる
生命の保持 (ア)ねらい ①一人一人の子どもが、快適に生活できるようにする。 ②一人一人の子どもが、健康で安全に過ごせるようにする。 ③一人一人の子どもの生理的欲求が、十分に満たされるようにする。 ④一人一人の子どもの健康促進が、積極的に図れるようにする。 (イ)内容 ①一人一人の子どもの平常の健康状態や発育及び発達状態を的確に把握し、異常を感じる場合は、速やかに適切に対応する。 ②家庭との連携を密にし、嘱託医等との連携を図りながら、子どもの疾病や事故防止に関する認識を深め、保健的で安全な保育環境の維持及び向上に努める。 ③清潔で安全な環境を整え、適切な援助や応答的な関わりを通して子どもの生理的欲求を満たしていく。また、家庭と協力しながら、子どもの発達過程等に応じた適切な生活のリズムがつくられていくようにする。 ④子どもの発達過程等に応じて、適度な運動と休息を取ることができるようにする。また、食事、排泄、衣類の着脱、身の回りを清潔にすることなどについて、子どもが意欲的に生活できるよう適切に援助する。 情緒の安定 (ア)ねらい ①一人一人の子どもが、安定感をもって過ごせるようにする。 ②一人一人の子どもが、自分の気持ちを安心して表すことができるようにする。 ③一人一人の子どもが、周囲から主体として受け止められ、主体として育ち、自分を肯定する気持ちが育まれていくようにする。 ④一人一人の子どもがくつろいで共に過ごし、心身の疲れが癒されるようにする。 (イ)内容 ①一人一人の子どもの置かれている状態や発達過程などを的確に把握し、子どもの欲求を適切に満たしながら、応答的な触れ合いや言葉がけを行う。 ②一人一人の子どもの気持ちを受容し、共感しながら、子どもとの継続的な信頼関係を築いていく。 ③保育士等との信頼関係を基盤に、一人一人の子どもが主体的に活動し、自発性や探索意欲などを高めるとともに、自分への自信をもつことができるよう成長の過程を見守り、適切に働きかける。 ④一人一人の子どもの生活のリズム、発達過程、保育時間などに応じて、活動内容のバランスや調和を図りながら、適切な食事や休息が取れるようにする。

養護と教育の「養護」に関しては、子どもの安全確保について書かれていることが分かりますね。
保育所保育指針に書かれている1つ1つの文言を、チェックリストのように捉えて自分の園の保育はクリアできているか?考えてみると分かりやすいかもしれません。ただし、保育所保育指針に書かれている内容は漠然としています。1つ1つの文言を具体的に噛み砕き、あらゆる場面に当てはめて考えることが大事です。

養護の部分で、絶対に抑えておきたい部分をピックアップします。

1,子ども1人1人のことを理解すること(発達段階、個性、家庭環境)
2,保育園が家庭や医者、関係機関と連携を取り、子どもに必要な環境を作ること(医療的サポート、食事や睡眠のバランスを考える)
3,子どもの発達を理解した上で子どもに対してちゃんと反応し、共感すること
4,子どもが援助を必要としている時は、すぐに応えること
5,子どもの発達に合った環境を作り、子どもが自ら取り組もうとする姿を大事にすること

子ども1人1人の理解、大人同士の連携、発達の見極め、子どもへの反応と援助、発達に合った環境作りこの5つが特に重要だというのが見えてきます。

 

ただ、文字を読むだけではなくて1つ1つ自分の保育や勤め先の保育園の保育を見直してみてください。

子どものことを理解しているつもりになり、大人の都合で子どもに指示を出してしまってないか?
職員間、保育士と保護者、保育園と関係機関の連携は十分と言えるか?
子どもの発達を理解できているか?
発達に合った環境になっているのか?

子どもの質問や誘いを後回しにしたり、無視したりしていないか?

改善できそうな点が必ず見つかるはずです。
私の勤めている園も改善点はいくつもあり、改善できるところから1つずつみんなで取り組んでいます。

 

最近で言えば、誤嚥の対処を誰でもできるようになっておいた方が良いということで、職員間で誤嚥の対処法を見直しました。
また、嘔吐処理の流れや、散歩時の行先や連絡先、子どもの人数の確認など、手順をマニュアル化し職員間で確認しました。

いつどんなケガや事故が起きるか分かりません。事故やケガを未然に防ぐ努力、起きてしまった時にちゃんと対処できるように対策を立てる努力をすることも「養護」の部分で、かなり重要な点ですね。

関連記事

保育園は情報共有がすごく大事!と言われてピンとくるでしょうか?? このことに気づいたのは、数年前の保育の改革中です。前の職場で、先輩に指摘されたことがありましたが、その時はそこまで響いておらず、長崎の園に来てようやく、「共有」の重要性[…]

保育園の”情報共有” できていないとまずいです。 失敗談と改善事例を紹介!

養護と教育の「教育」について

もっと読んでみる
(1) 育みたい資質・能力 ア 保育所においては、生涯にわたる生きる力の基礎を培うため、1の(2)に示す保育の目標を踏まえ、次に掲げる資質・能力を一体的に育むよう努めるものとする。 (ア) 豊かな体験を通じて、感じたり、気付いたり、分かったり、できるようになったりする「知識及び技能の基礎」 (イ) 気付いたことや、できるようになったことなどを使い、考えたり、試したり、工夫したり、表現したりする「思考力、判断力、表現力等の基礎」 (ウ) 心情、意欲、態度が育つ中で、よりよい生活を営もうとする「学びに向かう力、人間性等」 イ アに示す資質・能力は、第2章に示すねらい及び内容に基づく保育活動全体によって育むものである。

(ア)~(ウ)に書かれた内容が、養護と教育の「教育」の部分の基礎となる部分です。
保育所保育指針の別ページに、保育の内容について書かれているところがあります。その保育内容は、(ア)~(ウ)を育むことが目的ですよと示されています。

大事な点が、「教育」と言われると小学校の授業のようなイメージがあると思いますがそうではありません。

保育園に通う子どもたちは、遊びや生活自体が学びです。その中で、体験を通して1つ1つ習得していきます。大人が教え込むのではなくて、子どもたちの遊びや生活の中に体験できる場面や感じたり、発見したり、疑問に思ったり、表現したりできるような瞬間を大事にすることです。乳幼児教育は、教え込みではなくて、「環境」が大事で子どもが環境を通して体験することが学びへと繋がっていきます。「これを教えればいい」という答えがないため、小学校の授業よりもよっぽど難しいと個人的には思ってます!

そして、養護と教育の「教育」の部分で外せないのが10の姿です。

もっと読んでみる
(2) 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿 次に示す「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」は、第2章に示すねらい及び内容に基づく保育活動全体を通して資質・能力が育まれている子どもの小学校就学時の具体的な姿であり、保育士等が指導を行う際に考慮するものである。 ア 健康な心と体 保育所の生活の中で、充実感をもって自分のやりたいことに向かって心と体を十分に働かせ、見通しをもって行動し、自ら健康で安全な生活をつくり出すようになる。 イ 自立心 身近な環境に主体的に関わり様々な活動を楽しむ中で、しなければならないことを自覚し、自分の力で行うために考えたり、工夫したりしながら、諦めずにやり遂げることで達成感を味わい、自信をもって行動するようになる。 ウ 協同性 友達と関わる中で、互いの思いや考えなどを共有し、共通の目的の実現に向けて、考えたり、工夫したり、協力したりし、充実感をもってやり遂げるようになる。 エ 道徳性・規範意識の芽生え 友達と様々な体験を重ねる中で、してよいことや悪いことが分かり、自分の行動を振り返ったり、友達の気持ちに共感したりし、相手の立場に立って行動するようになる。また、きまりを守る必要性が分かり、自分の気持ちを調整し、友達と折り合いを付けながら、きまりをつくったり、守ったりするようになる。 オ 社会生活との関わり 家族を大切にしようとする気持ちをもつとともに、地域の身近な人と触れ合う中で、人との様々な関わり方に気付き、相手の気持ちを考えて関わり、自分が役に立つ喜びを感じ、地域に親しみをもつようになる。また、保育所内外の様々な環境に関わる中で、遊びや生活に必要な情報を取り入れ、情報に基づき判断したり、情報を伝え合ったり、活用したりするなど、情報を役立てながら活動するようになるとともに、公共の施設を大切に利用するなどして、社会とのつながりなどを意識するようになる。 カ 思考力の芽生え 身近な事象に積極的に関わる中で、物の性質や仕組みなどを感じ取ったり、気付いたりし、考えたり、予想したり、工夫したりするなど、多様な関わりを楽しむようになる。また、友達の様々な考えに触れる中で、自分と異なる考えがあることに気付き、自ら判断したり、考え直したりするなど、新しい考えを生み出す喜びを味わいながら、自分の考えをよりよいものにするようになる。 キ 自然との関わり・生命尊重 自然に触れて感動する体験を通して、自然の変化などを感じ取り、好奇心や探究心をもって考え言葉などで表現しながら、身近な事象への関心が高まるとともに、自然への愛情や畏敬の念をもつようになる。また、身近な動植物に心を動かされる中で、生命の不思議さや尊さに気付き、身近な動植物への接し方を考え、命あるものとしていたわり、大切にする気持ちをもって関わるようになる。 ク 数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚 遊びや生活の中で、数量や図形、標識や文字などに親しむ体験を重ねたり、標識や文字の役割に気付いたりし、自らの必要感に基づきこれらを活用し、興味や関心、感覚をもつようになる。 ケ 言葉による伝え合い 保育士等や友達と心を通わせる中で、絵本や物語などに親しみながら、豊かな言葉や表現を身に付け、経験したことや考えたことなどを言葉で伝えたり、相手の話を注意して聞いたりし、言葉による伝え合いを楽しむようになる。 コ 豊かな感性と表現 心を動かす出来事などに触れ感性を働かせる中で、様々な素材の特徴や表現の仕方などに気付き、感じたことや考えたことを自分で表現したり、友達同士で表現する過程を楽しんだりし、表現する喜びを味わい、意欲をもつようになる。

10の姿とは、小学校に就学する頃の子どもの姿を示したものです。必ずしもできなければならないというのもではなくて、目安となる姿という解釈がいいのかもしれません。

10の姿の1つ1つを子どもを見る視点にしてみると、保育の改善に生かせるような気づきがあるかもしれません。

例えば、ウの協同性について「互いの思いや考えなどを共有し…」と書かれていますが、5歳児さんのそういった姿が少ないと感じるのであれば、子ども同士が一緒に取り組めるような遊びを考えてみたり、子ども同士が協力して遊ぶように「○○ちゃんと一緒にやってみたら?」と声をかけてみたりすることで、子どもの成長に良い影響を与えられるはずです。

ただし、教え込んでできるようにさせるという考えはNG。

先ほども書いたように、環境を通して子どもが自ら取り組めるように工夫していくことが大事で、保育所保育指針の中にも、「子どもの主体性」や「保育者が応答的に関わる」など、教え込みと反対の言葉が何度も示されています。

関連記事

子どもの主体性 を育む保育は、保育所保育指針にも記されており、本来の保育のあるべき形です。 しかし、日本の保育は戦後の教育体制からなかなか進歩がなく、海外に比べると教育が遅れているのが現状です。そして、保育所保育指針にも「子どもの主体[…]

子どもの主体性 抑えておきたいポイントと実践例を紹介します!

養護と教育を一体化する難しさ

さて、養護と教育をそれぞれ書いてきました。

簡単に言えば、子どもの安全を保障することが大事で子どもの学びに繋がる体験の保障も大事ということです。

この2つを同時に行なうというところが、保育の難しさだと私は思います。

例えば、1歳~2歳児頃の子どもを例に考えてみましょう。
この時期の子どもにとって他の子との関わりがすごく重要です。そのため、他の子と十分に関わることができる環境作り、関わりが生まれるような環境作りが必要です。そして、十分に子ども同士の関わりを保障してあげなくてはいけません。これが教育的な視点です。

一方で、噛みつきや叩く、押すなど相手を傷つける行動も頻繁に起きます。噛みつきがあるなら止めなくてはいけません。これが養護的な視点です。

関わりが増えれば、噛みつきや叩くなどのリスクも増しますよね…。

 

この時に必要な考え方は、安全を保障しながら、教育面も保障するためにどうすればいいか?と工夫することです。
噛みつきを理由に、他の子との関わりをすぐに止めたり、別の部屋に連れて行き関わらせないようにしたりと養護的に寄りすぎてはいけませんし、噛みつきや叩くのを止めずに放任になってもいけません。

噛みつきや手がでそうになったら止める。子ども同士の関わりは必要以上に止めないようにする。
そのために、子どもの特徴を把握し噛みつきが多い子は、いつでも止めれる距離感で見守る。こうした関わりをクラスの保育士が連携して行えること。

 

これが、専門的に質の高い保育の答えではないでしょうか。

実際に保育現場で働きながら、養護と教育はバランスが大事だということを常々感じます。

保育士という職業に自信を持ってほしい

最後に、養護と教育の視点から保育士のすばらしさを書かせてください(笑)
文中に書いたように、小学校のようにカリキュラムが組まれて授業をするよりも、乳幼児教育の方が難しいと感じています。

もちろん、小学校の先生も大変だと思いますし、専門性も必要です。それは、学童に勤務することもあるため小学生の相手も保育園と違って大変だなと感じますので少しは分かります。

保育の難しさは、教えるのではなく環境を通して子どもが主体的に学んでいく所と、乳幼児教育にこれが正しいという答えがないことです。
また、何度も書いているように養護と教育のバランスを保たなくてはいけない点も難しいところだと感じています。

1人1人の子どもによっては適切な言葉掛けや対応は異なりますし、保育中はずっと模索し続けなければいけないのです。

私は、他の保育士さんの言葉掛けや子どもとの関わり方から学ばせてもらうことだらけですが、はっきりとした答えのない状態で常に模索し試行錯誤しながら保育を考える保育士さんはすごいなと思います。それだけ、”子どものために”尽くせる人たちなんです。

1人の保育士として、保育士を過大評価するのはおかしいですが、保育士の社会的な評価が低いことには疑問を感じています。
多くの方に保育士の専門性や保育内容について知っていただき、保育が評価されるような時代になれば嬉しいです。

養護と教育 まとめ

1,保育とは、養護と教育を一体的に行うもの

2,養護とは、子どもの安全を保障し、子どもが安心して保育園に通うことができること。そのために、子ども1人1人の理解、大人同士の連携、発達の見極め、子どもへの反応と援助、発達に合った環境作りこの5つが特に重要。

3,保育の教育とは、遊びや生活の中での体験そのもの。保育士は適切な環境を作り間接的にアプローチしたり、応答的に関わったりすることで子どもに必要な学びを保障する。

4,養護と教育を一体的に行うことは難しく、両方のバランスが大事。

5,保育士は専門性が求められる職業で、教育者として評価されるべきなのでは?

この記事を読んだ保育士さんや保育関係者の方が、保育の基礎になる養護と教育の振り返りと、保育士としての自信に繋がってくれれば嬉しいです。